Leanって何?

海外では「トヨタ生産方式」をLean(リーン)と呼んでいる

Lean(リーン)という単語自体は、「贅肉が無い」「筋肉質」という意味です。しかし、これだけでは理解できないので、Lean Enterprise Instituteのサイトにある「What is Lean?」を覗いてみましょう。

"リーンは、リソースの効率化とムダを排除することで必要な価値を生み出す方法です。そしてリーンは、ムダを0にすることで完璧な価値を達成するための継続的な研究的態度による実践です。ムダのない思考は常に実践されます。"

"リーンシンキングは常にお客様から始まります。顧客は何を大切にしていますか?または、別の言い方をすれば、具体的な行動を促すような方法で、お客様はどのような問題を解決する必要がありますか?
リーンプラクティスは、仕事(顧客に直接的および間接的に価値を生み出す行動)とその仕事をしている人々から始まります。継続的な経験を通じて、労働者と管理者は、物理的または知識的作業を問わず、作業を革新することで学習し、品質とフローを向上させ、時間と労力を削減し、コストを削減します。したがって、リーンプラクティスを特徴とする組織は、リーン思考と実践によって生み出される体系的かつ継続的な学習により、同業他社と比較した場合、絶えず変化する環境に高度に適応します。
ムダのない企業は、顧客とそのコンテキストを理解し続けるために組織されています。つまり、価値を指定し、それを提供するためのより良い方法を探しています。"

Leanの変遷

トヨタ生産方式という言葉はトヨタ自動車の専売特許でもあるため、Lean Enterprise Institute(LEI)は、TPSやトヨタ生産方式という言葉を使うことでトヨタ自動車との摩擦を避けるためにLeanという言葉を使用したと考えています。

1980年当時の日本は、Japan Qualityと呼ばれ、日本の品質は世界のどこよりもダントツに高く欧米の品質とは比べ物にならないくらい差が出ていました。そこで、欧米諸国の企業、大学(MITなど)は日本の研究、特にトヨタ自動車の研究を開始し、1990年には、 James P. Womack, Daniel Roos, and Daniel T. Jones.らによって「 The Machine That Changed the World (1990) 」が出版され世界にLeanという言葉が広がりました。

Leanの歴史については、Lean Enterprise InstituteのHPに「A Brief History of Lean」として書かれていますが、図式化したものを示します。この図でわかるように欧米諸国にはLeanが浸透してきていますが、日本にはLeanが全く浸透していないと言えます。LeanはLEIのHPにもあるように、生産現場のものからホワイトカラーの世界に進化してあらゆる業種(官公庁、病院、サービスなど)に広がっています。

「Woven Practice for Leader」のテキストより引用

よく日本の労働生産性が低いという話題を耳にします。実は日本が低いとうよりも、Leanの導入によって欧米の品質(魅力品質も含め)が飛躍的に向上した結果、相対的に日本の成長が止まっているように見えていのです。海外では、経営層がリーンを研究し、人事・総務、営業、企画、情報部門などあらゆる部門にLeanを導入することで強い強靭な組織が誕生しています。

Leanに取り組んでいる国や企業は、DXを推進していく上で経営的に求められる低コストと創造性(魅力品質)の2つの条件を満たし、DXを推進する上で阻害要因となっていた管理統制的な組織を改善しDXに必要な意思決定が早い組織文化を手に入れたと言えます。国レベルで言えば、DXを阻害する法制度の見直し、企業でレベルで言えば社内ルールや古い慣習の見直しということに該当します。

この進化したLeanは、DX(Digital Transforamtion)が求める組織文化そのものです。

欧米では、元々、ブルーカラーに広がったLeanの考え方をホワイトカラーやソフトウェア開発などに発展させる動きが顕著となり、この10年間で経営およびマネジメント手法として変化し広がっています。

元々のトヨタ生産方式は、日本人の思想・哲学に合った形で発展してきましたが、海外のリーンは欧米文化に合わせて特に経営層のマネジメントの人たちやホワイトカラーの職種に浸透させるべく独自に変化してきました。

「Woven Practice for Leader」のテキストより引用

Leanは、元々、同じ源流であるTPSから生まれたアジャイル開発とは特に親和性がよく、Lean経営+Agileという組み合わせで世界のDXを牽引しています。近年では、ロシアやスウェーデンといった品質的には遅れていた国々もLean化が進み魅力品質、当たり前品質ともに鎬(しのぎ)を削っていると言えます。

海外から遅れはじめている日本のマネジメント力を底上げするために、Leanに対抗し日本人の感性に適した形に新たにデザインしたホワイトカラー(営業、人事・総務、開発部門など)やあらゆる階層(新人〜中間管理職〜経営層)に向けてアジリティの高い組織文化を構築するためのプログラムが「Woven Work Design」です。

ソフトウェア業界におけるリーンの変遷

下記に示すようにトヨタ生産方式の変遷を理解しやすいようにウィルスに例えて説明します。ウィルスに例えると説明しやすい理由は、モノではなく人に宿るからです。トヨタ生産方式を研究した海外の人たちによって、アジャイル開発やゴールドラット博士の制約理論(TOC)などが誕生し、近年では組織全体をアジャイル化するための取り組みとしてSAFe(Scaled Agile Frame Work)などが派生して生まれてきています。

海外ではLeanも含めてTPSを源流とした強力なウィルス(方式)が次々と誕生しています。